日本動物愛護協会(JSPCA)は、18歳以上生きた猫を「長寿猫」として表彰することを行っています。ぼくがはじめて飼った猫は、20年生きました。
愛猫とは末永く共に暮らしていきたいものです。
そのためには飼い主が、猫の体の機能について知っておく必要があります。
猫はかなり変わった体の機能を持っています。猫がほかの生き物、たとえば人や犬などと大きく違う点はどこでしょうか?
猫の5つの必須栄養素である「たんぱく質」「炭水化物」「脂肪」「ミネラル」「ビタミン」について解説します。
もくじ
たんぱく質
猫はたんぱく質を栄養分にする
人や犬が炭水化物を主成分として栄養にしていくのに対し、猫はたんぱく質を摂取し、それを筋肉や、免疫力向上や、機能改善など、大きなエネルギーにしていきます。穀物不使用のキャットフードのグレインフリータイプを、飼い猫に与える方が多くなったのも、それが理由です。
昔は漫画などで、魚をくわえて逃げていく猫の姿がよく描かれましたが、これは基本的には間違っています。猫は本来、というより、今もなお肉食動物であり、主な栄養は良質なお肉です。
「魚味のキャットフードもある!」と主張する飼い主さんもいらっしゃると思うのですが、それは白身魚だったり、サーモンだったり、それが魚であるだけで、原材料がたんぱく質であることに変わりはありません。
お肉を好む猫、魚を好む猫、雑食の猫など、嗜好もさまざまですが、相性のいいフードを選ぶ必要があります。ただ、基本的にそれはたんぱく質を与えているのだ、という意識を持つ必要があります。
犬との最大の違いは、必須アミノ酸
たんぱく質は、アミノ酸が集まってできた化合物のことです。アミノ酸には2種類あります。
- アミノ酸 体内で作られるもの
- 必須アミノ酸 体内で作ることができないため、食事から摂りいれる必要があるもの
アミノ酸は20種類程度あります。その中でもタウリンは、猫にとって体内では作りだせない、必須アミノ酸の代表的成分です。犬や人はこれを自ら作りだすことができるのですが、猫にはできないのです。
直接食べ物から与えてあげないと、猫にしっかりした栄養は行き渡らないことになります。必ず原材料名に「タウリン」の言葉が入っているフードを選ぶようにしてください。
タウリンについて
【タウリン成分が入っている動物】
タコ、サザエ、牡蠣、ヤリイカ
どれも魚介類なんです。
…じゃあ、それらを猫に与えるのがいいの? という飼い主の方、「ちょっと、待った!」です。
それら魚介類の多くは、確かにタウリン成分を多く含みますが、べつの成分が猫にアレルギーを起こさせるために、与えてはならない食べ物です!
うーん、難しい…。
基本的に人が食べるものを猫に与えることはやめましょう。キャットフードでじゅうぶんに栄養が摂れるようになっています。
ほかにも、猫に与えてはならない食べ物があります。中毒になったり、死に至るものもあります。気を付けてください。
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炭水化物
犬と猫との大きな違い
犬は本来雑食です。人と似た内臓を持っています。炭水化物を主成分としており、多くの栄養素を体内で作りだすこともできます。噛み砕く歯を持っており、腸の長さも、体長の6倍あるといわれています。
それに比べて、猫の腸の長さは体長の4倍ほどです。猫の消化器系が弱いとされている理由は、ここにあります。
猫は食べ物を咀嚼することができません。犬の歯よりも、ずいぶんと本数が少ないのです。唾液が出ず、食べ物を分解しません。そのまま飲みこみ、まっすぐに胃から腸へと食物は運ばれていきます。短い腸の中で消化活動が行われることになります。
猫と炭水化物の関係
猫の苦手とするのは、炭水化物です。大量の炭水化物を与えると、消化できずに、肥満になったり、アレルギーを起こしたり、病気になります。
猫がエネルギーとするのはたんぱく質であって、炭水化物をほとんどエネルギーとしません。なので、穀物類は不要なのです。
市販の安価のキャットフードには、かさ増しをするために、米や小麦やとうもろこしなどの穀物を使ったものが多くあります。それらは消化活動を妨げることはおろか、猫のアレルギー物質成分も多く含みますので、なるべく炭水化物の含みが低いキャットフードを選ぶことが必要になってきます。
グレインフリー(穀物不使用)タイプがよいの?
実は、穀物が入ったキャットフードと、穀物の入っていないキャットフードのどちらがよいかは、意見が分かれるところなんです。
炭水化物にもビタミンをはじめ、多くの有効成分が入っており、とりわけ腸内環境を整える繊維質は猫にとって大切な栄養素です。
猫は軟便、下痢、便秘などの症状をよく引き起こします。腸内環境が悪いせいです。療法食タイプのキャットフードに切り替えたり、サプリメントを与えたり、いろいろ治療しなければならないと思った矢先、炭水化物が入ったキャットフードを与えたら、便通が治った、というケースがよくあります。
ただし、繊維は摂りすぎも危険です。栄養を吸収することを阻害してしまう働きがあるんです。
猫って、やっかいですね…。
キャットフードは出来る限り安く求めたいのが飼い主の正直な心情でしょう。栄養が行き届いた高価格なグレインフリーのプレミアム・キャットフードを与えつづけたから、といって猫が健康で長生きする保証はありません。
だから、といってやはり「安かろう、悪かろう」は、キャットフードについては、ぼくの本心ですね。
ぼくはローテーションを組んで、愛猫にはキャットフードを与えています。キャットフードの切り替えも注意が必要です。
大切なのは、あまりに安価な質の悪いキャットフードは控えたほうがよい、ということです。最近は市販の安価なフードも良質なものが増えてきました。
4Dミートといわれる、なんのお肉で作られたわからない混合ミールを与えてしまうと、猫の消化に悪く、アレルギーを引き起こします。穀物配合のキャットフードを選ばれる際は、あくまで良質で少量の炭水化物が理想的ですので、成分や原材料をよくチェックしてあげてください。
脂肪
猫にとってたんぱく質と同じくらい重要なものが、脂肪です。
脂肪? と聞くと、肥満を想像しがちです。「体にも悪いものじゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、適度な脂肪は重要な栄養素です。とりわけ猫はたんぱく質とおなじくらいに、脂肪をエネルギーにします。脂質がしっかり入ったキャットフードを選んであげてください。
脂肪は効率がよく、最小で最大の効果を発揮するのが、特徴です。元気のない猫ちゃんには、脂肪成分は即効性があります。たんぱく質や炭水化物に比べて、同じ分量で、その2.5倍のエネルギーになるといわれています。
脂肪は体内で作られますが、足りない場合は体の外から積極的に摂りいれていかなければなりません。
猫が肥満になってしまった場合は、肥満用の猫のフードがあるので、それらを選んで与えるようにしましょう。
さらに、発育期の猫や、妊娠した猫などは多くのエネルギーを必要とします。なおさら多くの脂肪を必要となるので、それら専用のキャットフードに切り替える必要があります。
猫に必須の脂肪3つ
- リノール酸
- α-リノレン酸
- アラキドン酸
キャットフードを購入する際に、成分表で脂肪酸の確認をしてください。これらの成分が入っているものを選びましょう。脂肪酸は、毛ヅヤをよくしたり、ホルモンバランスをはかったり、猫の体内で重要な働きをします。
キャットフードは酸化しやすく、賞味期限が過ぎてしまうと、酸化が起こり、これらの成分がなくなってしまいますので、しっかりと密閉し、陽射しを避けた場所にしまって、賞味期限内にキャットフードは与えて、残った場合は捨てたほうがよいです。
外国産のプレミアム・キャットフードなどの多くは、賞味期限が1ヶ月程度と短いので、ローテーションを組んでフードを与えている飼い主の方は、とりわけ注意が必要です。
ビタミン
- 水溶性ビタミン 尿から体外へ排出されます
- 脂溶性ビタミン 体内に蓄積します
ビタミンは2種類あります。摂りすぎも、摂らないのも、問題です(これも、また厄介ですね…)。とりわけ「脂溶性ビタミン」については、注意が必要になります。摂りすぎると、体内に蓄積するために、病気になってしまうのです。
猫とビタミンについての関係で重要なポイントがあるので、書きますね。
人や犬は野菜やフルーツなどの栄養成分から、体内でビタミン群を作りだしていくの対し、猫は体内でビタミンを合成する働きがないため、そのビタミンが直接含まれるものを摂取する必要があるのです。キャットフードの成分表を見るときに、ビタミン類が豊富にしっかり入っているかを、チェックしましょう。
ビタミンのはたらき
ビタミンは体によい、というイメージがあると思いますが、実はそれ自体にエネルギーはありません。栄養素と栄養素をくっつけて、活性化させるのがビタミンの効果です。
なので、成長期の猫にはビタミンはとても大切になってきます。たんぱく質もそうですが、ビタミンがしっかり入ったキャットフードを選んでください。
ミネラル
キャットフードの成分表示に、「灰分」と書かれたものが、ミネラル成分となります。
猫の栄養素について、もっとも重要な要点はミネラルかもしれません。猫の死因のトップ2の1つが腎臓病であり、その要因となるカルシウム等の成分が関わっているからです。
腎臓病とミネラル成分については、詳しく解説する必要があります。
なぜ猫は腎臓病になりやすい?
本来砂漠育ちの猫は、生命維持のために、水分を体内にため込んでしまう性質を持っています。猫の多くが腎臓を痛めやすいのは、尿をしないからです。
尿をしない猫には、お水をたっぷり与えてあげることが大切です。体のことを考えて、塩分を控えめにする飼い主の方もいらっしゃいますが、健康を害していないならば、一定量の塩分が入ったキャットフードを選ぶようにしてください。
塩分は喉の渇きを誘いますので、猫が水を飲むようになります。
しかし、水を飲んだとしても、排尿しないとなると…困ったことになります。腎臓に負担がかかり、下部尿路疾患になってしまう可能性が出てきます。
結石症には2種類ある
- ストルバイト結石症 成猫に多い
- シュウ酸カルシウム結石症 老猫に多い
それぞれ説明していきます。予防対策や、治療法がまったく違ってくるため注意が必要です。
まず、病状がない健康な猫、「あまり尿をしないな…」という程度ならば、最初は高たんぱく質のフードを与えて、塩分を多くとってもらい、尿を排泄してもらうようにしましょう。
次に、ストルバイト結石症の予防対策をされたい場合は、大量のカルシウムが体内に溜まってしまうために起こることが原因といわれます。尿として排泄されるものがされないため、それが固まってしまうのです。どうしても尿をしない猫の場合は、マグネシウム、リンの値が低いキャットフードを選んでください。成分表示では「灰分」(ミネラル)と記されています。さらに、ビタミンA、ビタミンCを含む成分表示のフードを選びましょう。石を酸化(液体)してくれる働きが期待できます。
シュウ酸カルシウム結石症は、カルシウムが大量排出した際に、結石することによって起こります。要因は、代謝機能の衰えです。なのでストルバイト結石症の予防とは違い、カルシウム成分を摂る必要が出てきます。
カルシウムの値が低くなりすぎると、骨密度の低下も招きます。成分としては、健康に重要なビタミンB6、ビタミンDの配合されたフードへ切り替えましょう。
カルシウムをはじめとする、マグネシウム、リン、などのミネラル成分は、猫にとって大切な栄養素です。バランスよく摂取することが大切です。すでに腎臓病となってしまった猫の場合は、獣医師に相談を仰ぎ、療法食に切り替える必要があります。
まとめ
猫の5大栄養素である、たんぱく質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラル、について解説してきました。
猫にはたんぱく質が豊富なグレインキャットフードがよい、腎臓病予防のためにはマグネシウムの値が低いものが良い、等の一般論が広がっていますが、バランスよく適性の栄養を猫に与えることがいちばん大切なので、なにごとも極端なことは避けたほうが無難です。
ぼくの飼っていた20年生きた猫は、病気らしい病気をしませんでした。健康に気を使っていたか、というと、実はそうでもないんです。こうしたほうがよい、というのは、あくまで一般論でしかないのですが、経験的にわかったことはいくつかあるので、以下に記します。
- 必ず年に一度予防接種をする
- 毛ヅヤが悪くなっていないか、体重が減っていないか、便が臭くないか、常に観察する
- 抱っこして、体温がいつもより高くないかを判断する
- ドライフードを主食として、適量、規則正しく与える
- 高いたんぱく質のキャットフードを与える
- 人が食べるものは与えない
- ストレスを与えない(いっしょに遊んであげる、日中家族の誰かがずっといてあげるのが、ベストです)
- 好きなように出入りできるように、部屋の扉はどこも少しずつ開けておく
- 窓が見えるポジションを与えてあげる
- 週に一度爪を切る
- 年に何度かはシャンプーをする
- 好きなもの(おやつ)を与える
次に飼った猫は、FIP(猫伝染病腹膜炎)で、生後すぐに引き取って飼ったのですが、わずか1歳半で命をひきとりました。
◆ FIPは、がん、腎臓病、に次いで、猫の死因の第三位です。これにかかると、9割の猫は助からないといわれています。
猫の寿命や健康には、どうしたって限界があります。飼い猫は必ず、飼い主より早く死にます。その共に生きる人生の中で、どれだけのことをしてあげられるかが大切です。
猫にとっての知識をとにかく勉強すること、キャットフードの購入や、病院代や、サプリメントなどお金をケチらないこと、猫と過ごしている時間を幸せなものにすること、愛猫を健康にし長生きさせて共に幸せな生活を送るには、この3点が大切かな、と思う次第です。